2022年御翼8月号その1

 

「桜の日」という提唱

 櫻井圀郎『「異教としてのキリスト教」からの脱却』(リバイバル新聞社)より
国語辞典や英和辞典でも、「イースター」の項目には「復活祭」「キリストの復活記念日」と書かれています。しかし、米国の図書館で調べてみると「イースター」とは「春(光)の女神」の名前であるということでした。そして、キリスト教のイースターとは、女神・イースターの春の大祭(たいさい)をキリスト教に取り込んだものだというのです。したがって、この時期、アメリカで交わされる「ハッピー・イースター」という挨拶は、意味的には、春の女神への祝辞になってしまいます。異教の女神の名前だと知っていたら、「イースター」という言葉が日本の教会で使われるようなことはなかったでしょう。日本語では、「イースター」と言われても意味が分かりません。意味が分からないままに「復活日」のことなのだろうと勝手に思い込んで、使い続けてきたのです。「イースター」という異教に由来する名称に代えて、筆者が提唱しているのは「桜の日」です。仏教では、四月八日は釈迦の誕生日で、「降誕会(ごうたんえ)」「仏生会(ぶっしょうえ)」と呼ばれています。日本では、寺院境内に種々の草花で飾った花(はな)御堂(みどう)を作り、その中に誕生仏(たんじょうぶつ)(釈迦の降誕の姿をあらわす仏像)を安置して、柄杓(ひしゃく)で甘茶を掛けることから「花(はな)会式(えしき)」「花祭(はなまつり)」とも呼ばれています。多くの花の開花する時期であり、多くの花で誕生を祝うことと、「竜華会(りゅうげえ)=灌仏会(かんぶつえ)の異称」という名称から生まれてきたものと思われます。キリストの復活も花の開花時期であり、花で祝いますから「花祭」「花の日」としても悪くありませんが、一捻りして「桜の日」としました。桜の開花時期に当たるからです。多くの日本人の心に桜花に対する特別の思いがあることは事実です。それなら、それを宣教の発端にしたいと思うのです。桜の花は、突然、一斉に咲きます。あたかも枯れ木が蘇(よみがえ)るかのようで、死から生命への復活を表現しています。主イエス・キリストの復活を桜花にたとえ、桜花で祝う……、これこそ日本人の心に訴える日本的なキリスト教の展開ではないでしょうか。


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