2021年御翼6月号その3

       

法華経と聖書

 千葉県小湊で漁夫の子として生まれた日蓮は、16歳で出家、日本一の智慧者(ちえしゃ)になりたいと、様々なお経を学びます。そして、天台宗の比叡山でも12年間修業を行いました。天台宗で一番大切にされていたお経は『法華経』ですが、日蓮は『法華経』こそ真実の仏教であるという確信に至ったのです。
 その理由の一つは、女性を含めたすべての人の成仏です。仏教経典には女性は成仏しないとされているものが多く、日蓮はそれに満足しませんでした。自分の母親を含め、彼の周りの多くの女性信者を思うとき、女性を含め、全人類を救うのでなければ本当の教典ではないことを第一の理由として挙げています。もう一つの理由は、釈尊(しゃくそん)は久遠(くおん)実(じつ)成(じょう)の仏であることです。久遠実成の仏とは、永遠の昔から存在し、すべての人類を救おうとされ、この歴史の中に活きつつある仏です。
【以上、門脇佳吉『日本の宗教とキリストの道』(岩波書店)】より

 法華経には、おもに三つの新しい思想があると言われています。それらは「一乗妙法」と呼ばれる万人成仏の思想、「久遠本仏」と呼ばれる永遠の救い主の思想、また「菩薩行道」と呼ばれる実践論(法華経を広めることが成仏のための行(ぎょう))です。「一乗妙法」とは、すべての人を平等に成仏させることのできる唯一の教えを意味します。「一乗」は〝ただ一つの乗り物〟の意味で、法華経の教えのことです。つぎに「久遠本仏」とは、シャカは〝永遠の仏〟であるという教えです。シャカが二九歳で出家し、三五歳の時に悟りに達したというのは仮の姿であった。シャカは実は〝久遠の昔〟…永遠の過去にすでに仏になった者なのだ、という思想です。法華経において人間シャカは、〝永遠の仏〟 〝永遠の救い主〟 に昇格させられ、いわば〝神格化〟 されたのです。 
これら法華経の三大思想は、聖書の教えとの間に明確な共通点を持っていることがわかります。「だれでも、キリストのうちにあるなら、その人は新しく造られた者です。古いものは過ぎ去って、見よ、すべてが新しくなりました」(二コリント五・一七)。聖書は、一乗妙法を説いているのです。救い主イエス・キリストは、久遠の昔から永遠の未来まで生きておられるかたです。「御子は万物よりも先に存在し、万物は御子にあって成り立っています」(コロサイ一・一七)。では、永遠の救い主は聖書でキリストとされ、法華経ではシャカであるとされているのは、なぜでしょうか。法華経は西暦五〇年以降に記されました。当時のインドには、すでにキリストの十二弟子の一人トマスが、伝道に入っていました。トマスが建てたと言われる教会も現存しています。この頃のインドは、ローマ帝国との交易も盛んで、キリスト教のイエス・キリストに関する教えは少しずつ入り始めていました。こうした事情から、他宗教に対抗しなければならないという思いを持った仏教徒の中には、人間シャカを〝永遠の救い主〟 に昇格させ、神格化しようとする者が現われました。インドの高名な宗教学者アーマンド・シャー博士によれば、キリストの使徒トマスの福音に対抗して、シャカを聖人から救い主に昇格させたのが大乗仏教である、とのことです。つまり 〝シャカは永遠の救い主である〟 という法華経の教えは、〝キリストが永遠の救い主である〟 という聖書の教えの、仏教的〝焼き直し〟 なのです。【以上、久保有政氏のHP    Remnant「法華経と聖書」より】

 日蓮宗は、鎌倉時代に日蓮によって開かれた宗派であるため、鎌倉仏教と呼ばれる。それまでの旧仏教では修行をした人だけが救われる(小乗仏教)とされ、僧侶になることが重要視された。一方、新仏教である鎌倉仏教では、信仰心に重点が置かれ、僧侶以外の一般民衆でも、厳しい修行なしに仏の加護を受けられると説いた。これにより仏教は爆発的に普及することとなった。日蓮宗は日本仏教の代表となった。
ところが日蓮宗では、日蓮宗を信じるよう強要せず、優しく教えを説いていこうとした。そのことに反発した日蓮の弟子の一人が、原理主義に立った日蓮正宗を作り上げた。日蓮宗は、釈迦を本仏(ほんぶつ)(無数の仏の中で、根本となる仏のこと)として、様々な思想を受け入れる。一方、日蓮正宗の本仏は日蓮であり、他宗派に批判的である。そして、一九三七年に小学校の校長をはじめとした教育者が集まった日蓮正宗の「教育者育成団体」として始まったのが創価教育学会である。もともと創価学会は宗教団体ではなかった。この創価学会の活動により日蓮正宗は信徒数を増加させるが、創価学会が日蓮正宗の教義から逸脱した独自思想を持ち込み、日蓮正宗の信条に従わないとし、一九九一年に日蓮正宗は創価学会を破門している。


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