2021年御翼5月号その1

       

誠実さがなぜ重要か

誠実さがなぜ重要か 三つの理由  
ジョン・C・マクスウェル『あなたがリーダーに生まれ変わるとき』(ダイヤモンド社)より抜粋
1 誠実さが信頼感を育てる
 ドワイト・アイゼンハウワーのことばーー「リーダーになるためには、従う者の存在が必要だ。
そのためには、彼らの信頼を手に入れなければならない。だからこそ、リーダーにとっての至高の資質が誠実さであることは、論を待たない。誠実さがなければ、現実に成功する可能性は全くない、それが保線作業の現場であっても、フットボールの競技場であっても、軍隊でも、オフィスでも同じことだ。仲間がリーダーのいんちきさ加減に気がついたとき、また、彼らがリーダーに文字通り誠実さが欠けていると判断したとき、リーダーは転落する。リーダーの言葉と行動は一致していなければならない。必要なことは、誠実さと志の高い目標だ」
2 誠実さには大きな影響力がある
 エマソンはこう言っています。「立派な組織はどれも、あるひとりの人物の長く延びた影だ。その人物の性格によって組織の性格が決まる」さらにウィルーロジャースがこのことばを補強しています。「人は議論によってではなく、自分が目にした現実によってその考えを変える」人は自分が目にしたことをするのです。
 家庭においても誠実さは大きな影響力がある。ドイツで育ったあるユダヤ人少年がいた。彼は自分の父親を心から尊敬しており、父は家族をユダヤ教の礼拝堂に毎日連れて行った。ところが少年が10代のとき、一家はドイツ国内の別の町に引っ越したが、そこにはユダヤ教の礼拝堂はなく、ルーテル教会が一軒だけあった。その町の名士は皆このルーテル教会に通っており、その地域の生活は教会を中心に営まれていた。突然、父親は家族に向かって、ユダヤの伝統を捨ててルーテル教会の信者になると宣言した。驚いた家族がその理由を聞くと、父親は自分の仕事にとって好都合だからと説明したのだ。少年は頭が混乱し、戸惑いは怒りと苦しみに変わった。少年は生涯その苦しみにさいなまれたのだ。その後、少年はドイツを離れ、英国に留学、毎日大英博物館に通い、自分の考えを一冊の書物にまとめた。その書物の中で全く新しい世界観を紹介し、世界を変える運命
を担ったある運動を考えついた。そこでは宗教のことを、大衆のための催眠剤だと述べられており、多くを神のいない生活へと向かわせた。その少年の名前はカール・マルクス、共産党運動の創始者であった。二〇世紀の歴史は、あるひとりの父親が自分の価値観をゆがめてしまったために、計り知れない影響を受けたのであり、今後もその影響は残るであろう。
3 誠実さは、リーダーがただ賢くなるのではなく信頼できる人物になるための力になる
 私は昔、フレッドースミスと夕食を共にしたことがあります。この賢い経営者と意見交換したテーマは、賢く振る舞うことと信頼されることの違い。スミスは、賢いリーダーというものは長く続かないという意見でした。これを聞いて私はピーター・ドラッカーのことばを思い出しました。ドラッカーはその代表作『マネジメント』で次のように述べています。「実効性のあるリーダーシップの最終的な要件は、信頼感を手に入れることだ。これができなければ、誰もついては来ないだろう。信頼とは、リーダーが責任を持って発言しているという確信だ。“誠実さ”という非常に古風なものを信じることだ。
実効性のあるリーダーシップがよりどころにしているのは――これも非常に古風な知恵で――賢く振る舞うことではない。本本来のよりどころは、一貫性を保っていることだ」
 真摯なりリーダーは、この事実を宣伝する必要がありません。それはリーダーが実行するあらゆるものに表れ、すぐに全員の常識になるからです。同じように、真摯でない姿勢は、本人がどれほど有能であっても隠し通せず、ごまかしたりかばったりもできません。誰ひとり、仕事仲間全員をだまし通すようなまねができるわけはない。私たちは各自、時間がたつにつれて、自分が見られたいと思うような姿ではなく、ありのままの姿を悟られるものです。
 アン・ランダースのことばーー「誠実さを備えた人たちは、信じてもらうことを望んでいる。そしてまた、時間がたてば自分の正しさが証明されることもわかっており、そのときが来るのを待っている」



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