2019年御翼2月号その2

                           

寝ころんで待つのが第一だと思っています―― 勝 海舟

 一八六七年、将軍慶喜(よしのぶ)が大政奉還(朝廷に政権を返上し、幕府をなくすこと)するも、新政府側は徳川幕府を倒すため西郷隆盛を新政府軍司令官として、薩摩・長州などの兵を引き連れて江戸に向かった。そのとき、西郷との会見に臨んだのが勝 海舟(一八二三~一八九九)であった。勝は、日本が内戦状態になれば、西洋列強の介入を受け、日本が植民地とされることを懸念したのだった。
 勝と西郷は、旧知の仲だった。二人はその三年前に、大阪で既に面会しており、そのとき勝は、「腐敗した幕府にはもう統治能力はない。雄藩による共和政治を行うべきである。長州藩を潰すぐらいなら、むしろ幕府を潰しなさい」と西郷に述べたという。幕臣の勝が、まさかこんなこと言うとは西郷もさぞ驚いたことであろう。西郷は勝を信頼して、翌日の江戸城進撃を中止、江戸城無血明け渡しが決定された。勝は、「かつて日本の未来について語り合った西郷ならば、この無益な戦いを避けてくれるのではないか」と期待していた。

勝 海舟の他の名言 勝海舟の考えや人柄がわかる言葉
(聖句は佐藤 順が引用)
・「然し、そう急いでも仕方がない。寝ころんで待つのが第一だと思っています。」
「静まって、わたしこそ神であることを知れ」(詩篇46・10)
・「やるだけのことはやって、後のことは心の中でそっと心配しておれば良いではないか。どうせなるようにしかならないよ。」
・「人の一生には「焔(ほのお)の時」と「灰の時」があり、「灰の時」は何をやってもうまくいかない。そんな時には何もやらぬのが一番いい。ところが小心者に限って何かをやらかして失敗する。」
「神のなされることは皆その時にかなって美しい」(伝道3・11)
・「事の起らない前から、ああしようの、こうしようのと心配するほどばかげた話はない。時と場合に応じて、それぞれの思慮分別はできるものだ。」
「言うべきことは、聖霊がそのときに教えてくださる」(ルカ12・12)
・「もし成功しなければ、成功するところまで働き続けて、けっして間断があってはいけない。世の中の人は、たいてい事業の成功するまでに、はや根気が尽きて疲れてしまうから大事ができないのだ。」
・「おこないはおれのもの、批判は他人のもの、おれの知ったことじゃない。」
「わたしたちは神に認められ、福音をゆだねられているからこそ、このように語っています。人に喜ばれるためではなく、わたしたちの心を吟味される神に喜んでいただくためです」(テサロニケ 一 2・4)
・「敵は多ければ多いほど面白い。」
・「人はどんなものでも決して捨(す)つべきものではない。いかに役に立たぬといっても、必ず何か一得はあるものだ。」
・「成すなかれ、天意に違うことを。」

 これらの名言は、父なる神への信仰ゆえに柔和になっている発言ばかりである。勝は、一八五三年にペリーが来航すると、海軍の必要性を説く。そして、海軍をつくるときにオランダから招かれた航海術の教官W・H・カッテンディーケから、勝はキリスト教について多くを学んだ。当時の宣教師は、勝について、「彼はキリスト教徒ではなかったが、彼以上にナザレ人イエスの人格を備えた人を未だかつて見たことがない」と記している。勝の息子は米国人クリスチャン女性クララ・ホイットニーと結婚している。クララは、「勝氏が亡くなる二週間ほど前だったと思います。兄のウィリスは、勝氏の口から、直接、『私はキリストを信じる』と、はっきりと聞いたと言います」と語った。


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