2018年御翼8月号その1

                           

エリック・クラプトンの回心体験

  イギリスを代表するロックスター、エリック・クラプトンは、バンドのギタリストとして著名になると、酒と麻薬に溺れ、女性関係に自堕落だった(『エリック・クラプトン自伝』)。しかし、クラプトンは、幼少期は、祖父母によって育てられ、そのときには地元の教会に通っていた。それ以降は信仰から遠ざかっていた。ところが、一八八七年にアルコールを断つために、リハビリセンターに入った際、イエス・キリストの存在を実感する体験をする。自伝の中でクラプトンは、自分の中で何かが起こったと述べている。それは、戻るべき場所を見つけた、というのだ。その場所のことは、これまでも知っていたが、自分が戻れると信じる必要性もなかったし、欲してもいなかったという。それ以来、彼は、朝にはひざまずいて助けを乞うため毎日必ず祈ってきたし、夜には、人生に感謝し、とくに酒に溺れないことに対する感謝を表明してきた。ひざまずくのは、へりくだる必要があると感じているからだという。これは、クラプトンにとって、回心の体験であり、信仰を得たことになる。
 ところが、その四年後の1991年、イタリア人の女優とのあいたに生まれた四歳半の息子が高層アパートの32階から転落死する。この悲劇から、クラプトンは、「ティアーズ・イン・ヘヴン〈Tears in Heaven〉」という曲を作った。これは、父親として十分にしてやれなかったことへの悔い改めと、失った息子との天国での再会に希望を置くものである。

天国で会ったら 父さんの名前を覚えてくれているかな?
前と同じようにしてくれるかな?
僕はまだ天に召されていないから 強く生きていかないとね

扉の向こうには安らぎがあるから
もはや天国には悲しみの涙がないんだね

悲劇の中でふさぎ込んでいたクラプトンは、悔い改めと神の国への希望を歌にして、活動を再開した。それは、悲しみの中でも神のご栄光を現わす、信仰的な行為である。それは、決して、無理をしてそうしているのではない。それ以外に立ち直る手段もないのである。

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