2017年御翼1月号その4

                                       

「機関車トーマス」に込められたメッセージ

 ロンドンの西北にあるロッドバラ教会のステンドグラスに、機関車トーマスが描かれている。ここで牧師をしていたウィルバート・オードリー(1911~1997)が「機関車トーマス」の原作者である。70年前、ウィルバートの息子クリストファーが2歳のとき、麻疹(はしか)にかかって長い間、家から出られなかった。「もうちょっと我慢すれば、楽しいお出かけができる」と息子を励ますために、表情豊かな機関車の絵を書きながら、物語を作った。夫人がそれをみて、よくできているから、出版したらよいと勧めたのだった。
 30年前始まったテレビアニメは40以上の言葉に吹き替えられ、世界中で放送されている。トーマスをはじめとする登場人物は、子どものように無邪気で、おかしいくらい感情むき出しである。そして、失敗しては悔い改め、役立つ機関車に成長して行く姿が描かれている。それがウィルバート牧師の伝えたかったメッセージであるが、それを説教じみた道徳的な物語として絵本にしたのではなく、子どもをなんとか笑顔にしたい、というのが一番の目的であったと、娘のベロニカさんは言う。「父は子どもを楽しませることが本当に大好きでした。聖書にも『子どもを笑わせることは大切だ』と書かれていると冗談で言っていました。生まれ持ってのものなのでしょう。それと、やはり牧師だった祖父、父のお父さんから受け継いだものも大きかったと思います」とクリストファーは言う。
ウィルバートが作った物語で、初期にはまだトーマスは登場しない。クリストファーが麻疹になった年のクリスマス、ウィルバートが手作りで小さな蒸気機関車をプレゼントすると、息子のクリストファーがそれを「トーマス」と名付けたのだった。主人公の名づけの親となったクリストファーも、後に「機関車トーマス」の物語を書き続けた。
 機関車が言葉を交わすというファンタジックな物語を作りだしたウィルバート牧師には、生涯持ち続けた一つのこだわりがあった。それは、鉄道雑誌で紹介されていた、実際にあった事故や出来事をもとに、機関車トーマスと仲間たちの物語を書く、ということだった。ウィルバート牧師は、子どもたちに嘘をつくのが嫌だった。子どもたちに、物語を通して何かを伝えたいのなら、リアルな世界を描いて、真正面から取り組むべきだ、その方が、説得力が増す。そんなこだわりの持ち主だった。子どもを簡単にだませると思っていても、たいていそううまくは行かないとウィルバート牧師は考えていた。「お父さんは僕をだまそうとしているんじゃないか」と思った子どもは、お父さんを敬う気持ちをなくしてしまう。「父は子どもたちにとても大きな敬意を持っていました。時には、子どもは大人より賢いと思っていたと思います」と息子のクリストファー(75歳)は言う。
以上、「きかんしゃトーマスのヒミツ旅 世代を超えたおくりもの」
NHK-G 2015年12月24日放送より

 父親を敬うことができない子は、天の父なる神さまを敬うことが難しくなると言われている。聖書に、「子どもを笑わせなさい」とは書いていないが、イエス様は子どもたちを大切にし、「はっきり言っておく。子供のように神の国を受け入れる人でなければ、決してそこに入ることはできない。」(マルコ10・15)と言われた。
イエス様の言われたように、子どもたちを大切にし、子どもをだますような物語ではなく、その魂が救われることを願い、聖書の真理にと実際の出来事に基づいて、「機関車トーマス」を書いたウィルバート牧師、今もその作品を通して世界中に愛、喜び、平和を伝えている。その根底にあるのは、キリストにより救われるという、悔い改めの信仰である。

〔参考文献〕
「きかんしゃトーマスのヒミツ旅 世代を超えたおくりもの」NHK-G
2015年12月24日放送


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